どうも「映画/健康雑談」の高岡です。還暦+V3です。
映画「正体」を観てきたのですが、いや~、横浜流星という役者さんは凄いねぇ。いいねぇ!横浜育ちではなくて埼玉の越谷の出身なのに、どうして横浜なのかなぁ~。確かに「越谷流星」では、あの顔立ちには似合わないかぁ?!
Sabine Langeによるpixabayからの画像
映画「正体」の「あらすじ」などのご案内は他の映画サイトに譲るとして、私はあまり他のサイトでは取り上げない脇役の俳優陣のことを書かせて頂きますね。あまり書いてしまうと【ネタバレ!】になってしまうので、これから映画をご覧になる方は、以下の線から下の文章を読むのは御控えください。ご鑑賞後にまた本サイトへお立ち寄りくださいませ!お願いいたします!
※以下はYouTubeに上がっている公式な映画予告編です!
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横浜流星扮する無実の罪にも関わらず死刑囚にされている鏑木慶一(かぶらぎけいいち)という男性。脱走した彼を追う刑事・又貫征悟に扮しているのが山田孝之。松重豊が又貫の上司役を演じているのだが、都合のいいように事を済ませてしまおうと又貫にパワハラをしかけてくる実に嫌な男なのである。松重豊という役者さんからは、普段、彼は決して悪い人間ではないだろうというイメージがあって、その先入観がこちらにあるので彼に私たちの期待を裏切る言動をされてしまうと映画を観ている我々のダメージは結構大きい。これはきっと藤井道人監督の計算による演出なのだろう。そして、松重さんにとっては、役者冥利に尽きるところなのだろうが、好感度を下げてしまうかもしれない。松重さんにとって藤井監督作への出演は、今回が初めてではないが映画「余命10年」でも難病を患っている主人公の父親という難しい役どころの演技を求められており、藤井監督作品へ出演するということは、きっと、いつも難しいチャレンジを突きつけられているといった感じなのではないだろうか。
もう一人、この映画で、本来、みんながやりたく役をしっかりと演じている山中崇さんの演技にも感服してしまいました。役者を離れた普段の山中崇さんは、きっと普通のにっぽんのお父さんの一人なのだろうけれど、彼の渾身の演技が映画をしっかりとシリアスな物語に落とし込んでいると言っても過言ではない。「めがね」のかけ方一つをとっても監督と話しあって、あの角度で「めがね」をかけているのだろうかと思ってしまいました。それぐらい心の中で色々と試行錯誤しながら、この役に挑まれたに違いありません。彼も「余命10年」に出演していましたが「余命10年」の時はそれほどインパクトのある役ではありませんでしたが、今回は観客にかなり印象を残す役どころであるとも言えますね。私は心底いい演技だなぁと思ってみていました。
そして、最後に言及したいのが「藤井道人監督」の映画作家ぶりです。ごく普通の監督さんは、普通にシーンパターンを繋いで一本の映画を作っていきますが、この藤井道人という監督さんは、台本の内容を、完全に観客目線で作品を作り上げていくプロだと思います。観客の心理をどこで掴み、どこで揺さぶり、どこで怒らせ、どこで涙させるのか、完成させる作品・映像のイメージを繰り返し、繰り返し、頭の中で咀嚼してから、ストイックな気持ちで撮影に臨んでいるのだと思いますし、そのための効果音の付け方、そして、画面毎にどのような音楽を求めていくのかも、かなり具体的なイメージを作曲家と話しあって作り上げているように思われます。
私は彼が「映画作家だなぁ」と感じてしまうのは「余命10年」では散り行く桜吹雪を見事に映画の重要なシーンで舞わせていたように、今回の「正体」では、本当に、本当に丁度良い加減の「雪」が大事な場面で役者たちの後ろに舞っているのです。映画を観ている人が自然に画面に没入出来る「雪の加減さ」に私は観ていて心が震えてしまいました。
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彼が取り上げる映画の題材は実に「あざとい」。しかし、それを観客に気づかれずに公開させてしまうところに彼の凄さを感じる。次に彼はどういう題材を選ぶのか?が今から楽しみでなりません。
30年前、ハリウッドで働いている知り合いから聞かれたことがあります。「ミスター高岡、いい監督とはどういう監督だと思う?」と。恥ずかしながら30年前の私は答えに窮してしまった。その知り合いの口から出た回答は「簡単だよ。稼げる映画を作れる監督だよ!」。そこには「人を感動させる」とか「面白いものを作れる人」ということなどは勘案されておらず、ただビジネスライクな言葉だけだった。そうでないとハリウッドでは生き残れないのだ。